スタイルズのYです。スタイルズ社のオープンソースを取り扱う部署でエンジニアをやっています。うちの部署では2018年からNextcloud社(ドイツ)のパートナーとして日本の代理店をやっています。今回はNextcloud社がドイツのミュンヘンで企業向けの発表会「Nextcloud Enterprise Day 2024」を開催するというので初めて現地に行きました。私は3歳から4歳頃にドイツのミュンヘン近くに住んでいた事もあり、何十年ぶりの訪独となりました。
1. 長旅の果てにたどり着いたミュンヘン
18時間(3時間半+14時間半)かけて飛行機でドイツのミュンヘンまで旅立ちます。成田空港で撮った写真を添えて、旅の始まりをお伝えします。台湾経由のエバー航空を利用し、おいしい機内食を堪能しました。
ミュンヘン国際空港に到着後は、電車で移動。郊外電車のSバーンと地下鉄のUバーンを乗り継いで、マリオットホテルまで行きます。郊外の電車の車窓はひたすら畑の横を突っ走ります。平野の多い国はうらやましいですね。
ホテルは街中から少し離れた緑豊かな場所にあり、幹線道路も近く便利な立地でした。周辺にはあまりお店はありません。ホテル内でほとんど用が足りるので問題ありませんでしたが、日本と違い自動販売機がそこかしこにあるわけではないので水が欲しいと思っても気軽に買いに行けなかったのが若干不便でした。
初日はNextcloud社担当とのランチから始まり、夕方までたっぷりと有意義な会話が続きました!ずっとリモートでしか会ったことがない担当者との初めての対面でした。
2. 歓迎の晩餐:バイエルン地方のプライドと多様性
ディナーは人を加えて、再びNextcloud社の方々とご一緒させていただきました。ビールを片手に、バイエルン地方の文化や歴史についての話で盛り上がりました。その地方の有名なレストランで、バイエルン地方の伝統料理を堪能しました。Bavarianという方々(バイエルン生まれの人または住民)がミュンヘン(ドイツ南東部周辺)にはいらっしゃってプライドが強い人達なんだよ~、と言った地元あるある話を聞いてどの国でもそういう話はあるのだなと楽しく聞きました。
この夕食会では様々な出身の方と交流を深め、それぞれの文化的背景とヨーロッパの複雑な歴史的事情ついて、そしてそれを認めて共生している人々について感慨深いものがありました。Nextcloud社の社員は非常に国際色豊かで、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、トルコ等、ヨーロッパの様々な国出身の人が一緒になって働いています。日本と違い、ヨーロッパは陸続きの大陸であることを強く印象づけたディナーでした。
3. Nextcloudエンタープライズデー:新機能と進化
翌日は、Nextcloud Enterprise Dayに参加しました。Nextcloud Hub 8が発表され7から追加された様々な機能が発表されました。
様々な機能が追加されましたが、
- ユーザー側の機能の追加
- 管理側の機能の追加
- セキュリティー面での強化
- パフォーマンスの強化
が発表され、いつにも増して、てんこ盛りの内容でした。いくつか気になった機能をピックアップしてみたいと思います。
3.1 新機能
- ダウンロード回数の制限機能:ファイルを何回ダウンロードできるかを制限できる機能です。これは、日本人に特に人気が出そうな機能だと感じました。
- Nextcloudアシスタント2.0:チャットGPTなどのAIモデルと連携し、個別の情報に基づいた回答を提供する機能です。Nextcloudのファイル管理機能と組み合わせることで、非常に強力なツールとなります。RAGと呼ばれる事前学習なしでレスポンスをカスタマイズする機能が追加され、Nextcloudのファイルを読み込ませてそのファイルの内容に沿った回答を行うことができるようになりました。
- Nextcloud Hubの機能強化:Nextcloud Hubはチャット、ファイル編集、カレンダー、メールなどを統合した、オールインワンコラボレーションツールですが、従来のツールではバラバラだった機能が、Nextcloud内のどこの機能からも別の機能が埋め込まれて利用できるキメラのような機能が強化されています。World Wide Webの初期の思想(セマンティックWeb)に近いものを感じました。
- 外部アプリケーションとの連携:Nextcloudは、様々な外部アプリケーションやサービスとAPI連携することができます。今後は、さらに多くのサービスと連携しやすくするそうです。
- マイクロソフトシェアポイントへの対抗:Nextcloudは、マイクロソフトシェアポイントに対抗する機能を積極的に開発しています。Nextcloud TablesやTalk、Sendentによりマイクロソフト製品の代替を強くアピールしています。
- その他、パフォーマンスの強化や複数台による大規模な構成にも対応できるようになったそうです。
Nextcloudは、単なるファイル管理ツールから、様々な機能を統合したオールインワンコラボレーションツールへと進化しています。今後は、さらに多くの機能が追加され、より使いやすく便利なツール(Hub)へと進化していきますね。
4. 参加者から学ぶ:様々な活用事例
午後のセッションでは、Nextcloudを様々な方法で活用している企業や組織の発表を聞くことができました。
4.1 事例
- ドイツ連邦ホルシュタイン州:様々なサービスを職員に提供するために、Nextcloudを活用しています。将来的にマイクロソフト製品の依存をなくすことが目標だそうです。
- ミュンヘンの聖歌隊:少年たちのボイストレーニングやコンサートのスケジュール管理に、Nextcloudを活用しています。高度なセキュリティを権限管理と共に実現し、モバイル端末での利便性を追求しているということでした。
- 大手企業:モバイルデバイスでしか使わない社員向けに、Nextcloudを活用しています。
これらの事例は、Nextcloudが様々な業種・業態で活用されていることを示しています。
5. Nextcloud社の方との交流
これまでメールやWeb会議でしかお会いしたことのない方々とリアルに話すことができました。遠くはるばる日本から訪れたということもあり、非常に歓待していただきました。非常に濃い会話ができたのはやはり実際にあって話をすることによるものだと思います。
Nextcloudのパートナーの会社の方ともお会いすることでき、「こんな不具合があってねぇ」と伝えると、「なにそれ、すぐ直すよ!」と言ってもらえたり、まさかの出会いがあったり旅にはハプニングがつきものですが、嬉しいハプニングが沢山ありました。
写真中央が、Nextcloud CEO/ファウンダーのFrank Karlitchekです。
6. 忘れられない思い出:ミュンヘン街歩き
ミュンヘンでは、ほんの少しですが市内を散策できました。1回見ているはずなのですが、初めてのような懐かしいような奇妙な気分でした。
ミュンヘンは、古い建物と新しい建物が混在する、魅力的な街です。特に修復中の古い建築物や石畳の道が、過去へのリスペクトと現代の生活がどのように結びついているのかを示していました。この街の持つ独特の魅力は、ビジネスだけでなく、文化や歴史にも深い洞察を与えてくれることを教えてくれました。
ミュンヘンは、ドイツで3番目に人口が多い町でBMWのお膝元の町です。都会だけど都会じゃないような場所でした。最近のヨーロッパの状況を聞いて治安の状況を懸念していましたが、空港や駅は治安もよく、危ない思いをすることはありませんでした。
7. 今後のNextcloudとのパートナーシップ
私自体が住んでいたという記憶があるからか、勝手にドイツの企業というだけで親近感を持っていましたが、実際にNextcloud社の方々と話したり打合せをしてみると、そんな親近感よりももっと緊密な仲間感がある事に気がつきました。スタイルズのオープンソースに対する姿勢とNextcloud社のオープンソースの姿勢が似通っているのか、それとも技術者としての考え方が似ているのか、よく分からないのですが向かっている方向性が非常に似ている気がします。
プロプライエタリーなソフトウェアではなく、オープンソースによってプロダクトが発展し、世界が急速に変わる時代になりました。そんな中、Nextcloudは様々な用途に使えるようにAIをはじめとする機能を継続的に大きく進化させ続けています。「絶対に開発で競い負けないぞ」という強い意気込みと「これで世界を便利に変えてやるぜ」という大きな野望を感じたNextcloud Enterprise Day 2024でした。