本記事は、Stylezのカレンダー | Advent Calendar 2022 – Qiita 12月23日の記事です。
2022年も、もうあと少しとなりました。
Nextcloudも積極的に進化を続け、Nextcloud 24とNextcloud 25がリリースされました。
それぞれの新機能内容や実際に使ってみた感じについて説明していこうと思います。
1. Nextcloud 24/Hub 2
Nextcloud Hub 24 がリリース 翻訳記事については以下を参照してください
https://nextcloud.stylez.co.jp/wp-content/uploads/2022/06/NextcloudHub24ishere_release_ja.pdf
データ移行機能
これはNextcloudにある自分のデータを別のNextcloudへまるごと移行する機能です。Nextcloudのプロダクトは
「データを自分の管理下に置く」というのをポリシーとして掲げています。その為にデータを自分の意思で自由に移動できるようにするというのはとても重要な機能だと思います。
この機能により、あるNextcloudから別のNextcloudへ移動が楽になり、プラットフォームに依存することがなくなります。
ベンダーロックインを避ける重要な機能ですね。
エンタープライズサーチ用API
これはファイルアプリの機能の一つですが、全文検索などの検索用APIがNextcloudで提供されるようになりました。APIの説明などの利用方法についての詳細は、Enterprise Editionの有償契約によりドキュメントが開示されるそうです。
弊社スタイルズでも社内のNextcloudではElastic Searchサーバーを稼働させて、ドキュメントの全文検索を行っています。Nextcloudの通常の検索では、ファイル名やタグ、コメントでしか検索できませんが、全文検索アプリを有効にすることによりオフィスファイルやPDFの内容でも検索する事ができるようになります。
URL共有の権限が追加
これまでのURL共有から共有時の権限の細かい制御が追加されました。
以下の図で左側がこれまでの権限です。
- 読込専用
- アップロードと編集を許可
- ファイルドロップ
それが、「カスタム権限」をクリックすると右側の権限の個別選択ができるようになりました。
これにより、アップロードできるけど削除できない権限にしたり、アップロードと削除できるけど編集できない権限にする事ができるようになりました。
データベースの負荷が4分の1になりました
様々な修正によりデータベースの負荷が下がりました。
外見的なUIの機能での利便性については変更されていませんが、Nextcloudを利用する様々な場面でレスポンスがよくなっていることが分かると思います。
Nextcloudで一番のパフォーマンスのボトルネックになるのがデータベースです。NextcloudのWebサーバーに対しては複数のサーバーでスケールアウトすれば解決できることなので、さほど問題はないのですが、データベースの分散化は技術的に難しいのでデータベースの負荷が下がることは利用者や使用頻度の高いNextcloudを運用している管理者にとってはとても重要な事です。
弊社の社内で利用しているNextcloudもバージョン24にアップデートしてから画面の表示が早くなっているのを体感的に感じます。
各種グループウェア
近年のNextcloudで強化されている機能はファイル共有の部分もありますが、グループウェアの部分も強化されています。カレンダーアプリ、メールアプリ、Talkアプリの開発のスピードは素晴らしく1年で別物になっているような勢いです。ここでは取り上げませんが、是非皆さん使ってみてください。
ファイルの自動ロック
ファイルの自動ロックと書くと何の機能なのか、全然分からないと思いますが、ファイル編集時の排他制御のことです。この機能は、Nextcloudの前身のownCloud時代から沢山要望をいただいている機能です。
Nextcloudはファイルサーバーの代替として利用されることが多いので、ファイルサーバーで共有フォルダーにあるオフィスファイル(xlsxやdocx)を編集しようとしたときに「このファイルは別の利用者が編集しています」というメッセージがでて編集できない機能を実現できないのか?と聞かれることが非常に多くありました。
この要望をいただく度に「WebDAVにはファイルLOCKというメソッドはあるのですが、Nextcloudでのファイル共有時にそれを実現することは難しく….」といった言い訳をしてきました。実際、WebDAV経由接続の場合には今でもファイルをロックすることはできません。しかし、Nextcloudのデスクトップクライアントを使う場合に限り、ファイルをロックすることができるようになりました。
同時にNextcloud Officeで編集時にもロックがかかるようになり、複数の利用者が同時にNextcloud Officeで編集したときにファイルが壊れるという問題を解消することにもつながっています。
じゃあ、実際に機能の実装状況と挙動はどうなのか?というと….。Nextcloudのデスクトップクライアントを使った場合の挙動は問題ありませんでした。自動的にロックがかかり、他の利用者がファイルを編集しようとするとロックがかかっているメッセージが出ます。
NextcloudとONLYOFFICEを組み合わせた場合にはこれはパーフェクトに挙動します。何の問題もありません。
しかし、Nextcloud Officeを組み合わせた場合には、まだ少し挙動がおかしいところがあるようです。次のバージョンに期待ですね。
Nextcloud TextとCollectives
こちらも共同編集の為のアプリです。TextとCollectivesでは表現力に違いがあります。Textはマークダウンでよりライトに編集を進められるツールです。Collectivesもマークダウンで記載できますが、もっと装飾方法に幅があると言う感じです。また、Collectivesの方が権限設定やTextよりも構造化できるというメリットがあります。
ノート感覚で気楽に編集したい場合にはTextを、より複雑な構成と情報のストックして使いたい場合にはCollectivesを使うのが良いと思います。
2. Nextcloud 25/Hub3
Nextcloud 25/Hub3は、24からの正常進化という感じがします。
詳細については以下に記事を書いていますのでこちらを参照してください。
ここではNextcloud 25についての全体感について書いてみたいと思います。
- Nextcloud 25/Hub 3 新機能紹介 パート1 | Nextcloud日本公式サイト https://nextcloud.stylez.co.jp/blog/techblog/nextcloud-25-hub-3-part1.html
- Nextcloud 25/Hub 3 新機能紹介 パート2 | Nextcloud日本公式サイト https://nextcloud.stylez.co.jp/blog/techblog/nextcloud-25-hub-3-part2.html
- Nextcloud 25/Hub 3 新機能紹介 パート3 | Nextcloud日本公式サイト
https://nextcloud.stylez.co.jp/blog/techblog/nextcloud-25-hub-3-part3.html
Photo 2.0について
これまで写真の表示機能についてはあまり機能がなく、ビュワーとしてもイケてない状況でした。それが、今回のPhoto 2.0で大きく改善されました。下記の図のように編集機能がついて、ようやくGoogle PhotoやiPhoneアプリと肩を並べられるぐらいになったと思います。
ファイルのアプリの階層とは別でアルバムを作ることができるので、より自由度があがりました
Nextcloud Talkについて
コロナ禍により世界で利用が進んだのがWeb会議だと思います。日本でも一気に利用者が増え、商談でも、打ち合わせでも、セミナーでも、オンラインで開催することが普通にできるようになってきました。当たり前にヘッドセットを使うようになりエコーをさせないように会話ができて音声の品質もずっとあがりました。
日本でもWeb会議するときの一般常識が普及したように思います。
Talkはコロナ禍よりも前に存在するアプリです。チャットとWeb会議によるコラボレーションがファイル共有に絡まるとより仕事がしやすくなるということを見抜いていた先見の明があったということだと思います。残念ながらそこまで考えられているWeb会議アプリやチャットツールは、まだ多くありません。Zoomによるファイル共有はまだまだお粗末な状況ですし、Teamsのチャット機能は使いづらいという声を聞きます。SlackでのWeb会議は有料版が必要ですし、Dicordでのファイル共有は今ひとつです。
下図のように、タイムシフトのできるチャット、リアルタイムなWeb会議、それをつなぐ共同編集という3つの機能があって、初めて効率的にな共同作業ができることをNextcloud Talkは示していると思います。
グループウェア
Nextcloud 25では24で強化したグループウェアの機能の進化を引き続き進めています。
ここでは取り上げませんが、Webメール機能はより使いやすくなっています。
是非皆さん試してみてください。
モバイルアプリ
iOS、iPadOS、Android、この3つのプラットフォームのアプリを開発し続けることは実は結構大変なことです。これらのモバイルデバイスのOSのバージョンはどんどん上がり、それに合わせたアプリの改修をし続けなければなりません。かといってAndroidデバイスでは古いバージョンのままの場合もあり、それらのサポートも継続するのは並大抵のことではありません。
しかし、Nextcloud社は利用者に無料でこれらのアプリを無料で提供し続けています。
アプリの開発が進めば進むほど、OSとの親和性は上がり、利用体験は向上し続けています。
これまでWeb画面でしか設定できなかった機能が、モバイルアプリ上でできるようになり、PCが必要なくなってきています。
別のプラットフォームとの接続性
Nextcloudは自分のところにだけ情報を集約しようとしているのではありません。既存のプラットフォームとの連携も強化しています。これはNextcloudがアプリケーションをプラグインして機能拡張できる特徴をもっているからでもあります。オープンな開発ポリシーを掲げてロックインしないという事は、他のプラットフォームとも仲良くできるという事も意味します。
様々な有償/無償に関わらずNextcloudが連携できるようになることにより、より一層皆さんのデジタルライフが充実し、非効率な作業から解放される事を目指しています。
3. まとめ
2022年の機能について筆者の感じたことを中心にまとめてみました。まだ、Nextcloud 25については十分にテストできてない部分も多く、グループフォルダーでの暗号化やEnd-to-End暗号についても未テストなので引き続きテストしていきたいと考えています。